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心房細動

目次

    心房細動(しんぼうさいどう)は社会の超高齢化とともに爆発的に増えている不整脈の1つです。そして、不整脈とは正常な脈以外のすべての脈のこと。

    それでは正常な脈とはどのようなものでしょう?
    簡単に学んでみましょう。

    正常な脈とは

    正常な脈は、右心房にある「洞結節」と呼ばれる部位から出る電気信号により始まります。これが心房と心室に伝わり、それぞれが一対一で規則正しく収縮する状態が正常な脈です。このような洞結節から始まる正しいリズムを「洞調律」と呼びます。正常な脈とは洞調律のことをいい、これ以外の状態はすべて不整脈と呼びます。不整脈には本項で説明する心房細動の他にも、期外収縮や心室頻拍など様々なものが存在します。

    心房細動とは

    正常な洞調律時の洞結節の役割が、企業における社長で、業務命令(電気刺激)を受け取る心室が社員であるとするなら、心房に偽物の社長が出現し、不規則で多量の業務命令がくることで社員の仕事量が増え混乱を生むのが心房細動です。多量の業務により心房が細かく動く(震える)ためこのように呼ばれています。
    脈拍が完全に不規則になるのが特徴なので、ご自分で検脈をすると分かりやすいでしょう。
    発作的に生じる『発作性心房細動』の状態で始まり、最終的に心房細動が固定する『持続性心房細動』へと移行していきます。

    心房細動になるとなにが問題なの?

    心房細動の問題点は大きく分けて①動悸の症状②脳梗塞③心不全の三つです。

    動悸の症状について

    心房細動になると脈が速くなり、動悸として症状を感じる人が増えます。動悸がすると多くは不安になり生活に支障をきたします。ただし、症状がない心房細動も多く、健康診断で初めて見つかる人も、また多いです。

    脳梗塞について

    心房細動は脳梗塞の原因になります。これは心房が細かく震えることで血液によどみが生じ、血の塊(血栓)ができるからです。流れによどみがあるとドロッとしてくるのは、生活排水を流す道路の側溝の状態に似ていますね。この血栓は心房の中に留まっている限り何も悪さはしませんが、ひとたび血液の流れに乗って脳の血管に詰まると、脳梗塞を起こします。心房細動による脳梗塞は、非常に重篤で後遺症を残してしまう可能性があるため、後で述べる抗凝固療法が必要になります。

    心不全について

    心房細動では、偽物の社長が不規則で多量の業務命令を出し続けます。すると社員はどうなるでしょう?社員(心室)は疲労し業務が破綻することになります。心臓の業務破綻を心不全と呼びます。心不全の結果、肺や胸の中、足などに水分がたまり、息苦しさやむくみが生じます。そしてこのような症状は生活の質を下げるだけでなく、突然死などの原因になるのです。また、心房細動は心不全の原因になりますが、心不全がまた心房細動の原因にもなることも忘れてはいけません。

    心房細動はどのように治療するの?

    これまで述べたように、心房細動の問題点を解決するために大事なことは生活習慣の改善と薬物治療です。さらには、カテーテルアブレーションという選択肢もあります。それぞれについて解説していきます。

    生活習慣の改善をしましょう

    高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、飲酒などが心房細動の原因と考えられています。ですので、これらに問題があるようであれば、生活習慣を改善することで心房細動を予防できることがあります。また、後で述べるカテーテルアブレーション治療後の心房細動の再発率も、生活習慣の改善により3割ほど低下します。

    薬はどのようなものがあるの?

    内服薬は主に血栓を予防する薬(抗凝固薬:こうぎょうこやく)と脈を整える薬(抗不整脈薬:こうふせいみゃくやく)の2種類があります。
    ① 抗凝固薬
    脳梗塞を予防する薬です。
    心房のなかにできる血のかたまり(血栓)が脳梗塞の原因ですので、血液をサラサラにすることでこれを防ぎます。このような薬が抗凝固薬です。とくに心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞経験者など、1つでも当てはまる方は脳梗塞のリスクが高いため抗凝固薬が必要とされています。
    ② 抗不整脈薬
    脈を整える薬です。とくに動悸を抑える効果が期待されます。
    心房細動を減らすリズムコントロール薬と、脈拍を抑えるレートコントロール薬の2種類があります。無症状の心房細動の人はいずれも不要になることがあります。

    アブレーションってなに?

    心房細動の“もと”をカテーテルで焼いてしまう治療です。「アブレーション = 炙(あぶ)る」と考えると覚えやすいです。
    心房細動は肺静脈という場所から出ていますので、ここから来る電気信号を遮断すれば心房細動は起きません。このため、肺静脈の周りを焼灼して伝導を遮断する治療が「カテーテルアブレーション」となります。薬物療法と比較して、特に初期の発作性心房細動の時期に行うと効果てきめんであり、手技の安全性が飛躍的に向上したこともあり、近年、爆発的に治療例が増えています。

    まとめ

    心房細動はとくに高齢者では多くみられる不整脈である一方で、心不全や脳梗塞の原因になる重要な不整脈です。適切な治療があるので、健診で指摘される、あるいは動悸の自覚があれば放置せず、最寄りの循環器内科で必ず相談してください。

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