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2021.12.23

生活習慣に気を配ろう

目次

    普段、タバコとアルコールをたしなむ人は多いと思います。実は、この2つは合法ドラッグです。海外の大学ではコカインやマリファナなどの違法薬物と同列に学生手帳へ記載されるところもあり、入学時に指導を受けるための依存性薬物として広く認識されています。一方で、日本ではタバコとアルコールは依存性薬物というより嗜好品という扱いのため、その危険性は十分に理解されていません。ここでは、タバコとアルコールの循環器病への危険性を中心に述べていきます。

    タバコは心筋梗塞の原因

    喫煙者のみなさん、タバコ、やめられそうですか?

    「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなり、心筋梗塞・脳卒中の危険性や肺気腫を悪化させる危険性を高めます。」

    ・・・とタバコの箱に書いてあるとおり、喫煙は肺だけでなく心臓と脳にも悪影響があります。しかし、煙と直接触れてしまう肺が悪影響を受けるのはなんとなく理解できますが、煙に触れることがない心臓や脳に悪影響があるのはどうしてなのでしょうか?

    タバコの煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素の他にも多くの有害成分が含まれており、これらを吸うことにより、直後から血管と心臓に悪い影響が出てきます。

    血管においては、喫煙により交感神経が刺激されるため、血管は収縮し血圧は上昇します。このため、高血圧を引き起こし動脈硬化の原因になります。また、心臓では、喫煙による一酸化炭素の増加で血液中の酸素が不足気味になるため、これに応答して心拍数が増加します。酸欠自体が心臓を弱らせますが、弱った心臓が普段よりさらに余計な仕事を課せられることになるので、心臓の負担がますます増えます。

    それだけではありません。喫煙により血小板が固まりやすくなるので、血栓ができやすくなります。そのうえ、喫煙は糖尿病を悪化させ、コレステロールも上昇させます。それらが相まって、動脈硬化(血管がしなやかさを失い、硬く、もろく、ざらざらになる)は進行し、血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳卒中を生み出すのです。

    そして喫煙は自分だけでなく、周りの人へも影響を与えます。
    喫煙者が吸う主流煙より、火の付いたタバコの先端から立ち上る副流煙の方が有害物質を3~4倍多く含むと言われており、心筋梗塞リスクを上げることが知られています。これは、あなたの喫煙がご家族、職場の仲間、周りの人の健康を害していることになります。

    さて、タバコが心筋梗塞をはじめとする循環器病の原因であることはわかりました。それでは、近年、健康志向の喫煙者の間で爆発的人気を誇っている加熱式タバコはどうでしょうか?

    加熱式タバコは、タバコを燃焼させず専用機器で加熱し、それにより発生する蒸気を吸うものですので、副煙流はほとんど出ません。燃やさないため、燃焼によって発生するホルムアルデヒドや一酸化炭素、タールなどの有害物質が大きく減るとうたわれています。しかし、このようなデータはタバコ会社に関わりのある研究機関が出していることがほとんどであるため、信頼性に欠けるといわれています。なにより、有害物質が減ったとしても、それが肺がんや循環器病のリスクを減少させるというデータは全くないのです。

    いずれにしても、加熱式タバコは結局タバコであり、ニコチン依存症の原因になりますので吸わないに越したことはないですね。

    禁煙のススメ

    「私は早死にしてもいいから、タバコを吸い続ける」
    「もう喫煙して20年だし、いまさら禁煙しても無駄だ」
    と話す人をみかけることがあります。果たしてそれは正しいのでしょうか?

    喫煙者は早死にすることは間違いありません。喫煙により寿命が8~ 10年短くなることがわかっています。しかし、「いまさら禁煙しても無駄」は誤りです。

    なぜなら、あなたがいま禁煙することで、次のようなことが期待できるからです。

    • 8時間後から血液中の一酸化炭素濃度が下がり、体内の酸素濃度が上がります。
    • 48時間後から心臓発作のリスクが低くなり、臭覚や味覚が回復し始めて食事が美味しくなります。
    • 2週間から3ヶ月後には循環機能が回復し、肺機能が30%アップします。
    • 半年後には息切れが改善し、疲れにくくなります。
    • 1年後、心筋梗塞のリスクが低くなってきます。
    • 10年後には肺がんのリスクが半減します(4.8倍のリスクが半減して2~3倍になる)。
    • 15年後には心臓病により死亡するリスクが、タバコを吸っていない人と同等になります。

    どうでしょうか?
    いつ禁煙しても「手遅れ」とはいえませんね。
    それでは今すぐ禁煙しましょう!

    とはいえ、禁煙はきわめて難しい苦行でもあります。なぜなら、喫煙習慣とはニコチン依存症のことであり、ニコチン依存症は病気だからです。意思の力だけで病気を治すのは難しく、依存症から抜け出すのは容易ではないのです(自力で禁煙に成功した人は、そもそもニコチン依存症ではなかった人たちです)。ニコチンはコカインやヘロインなどの覚醒剤よりも依存性が強いといわれていますので、ある意味仕方ないといえるかもしれません。

    このように、一人で禁煙するのはとても大変なものですが、伴走者がいればうまくいく可能性が格段に上がります。伴走者がほしい、そのようなときに考えてほしいのが禁煙外来です。医師や医療スタッフがあなたの伴走者になってくれます。条件を満たせば保険診療で禁煙外来を受診できますのでぜひ相談してみてくださいね。

    保険適用の条件は以下の4つですので、覚えておいてください。
    ① 直ちに禁煙しようと考えていること
    ② ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)が5点以上であること
    ③ 35歳以上の人についてはブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること
    ④ 禁煙治療を受けることを文書により同意していること

    過度のアルコール摂取は血圧と中性脂肪を悪化させます

    アルコールの「適量」を知っていますか?
    一般的に健康に良いといわれているのが「適量」ですが、これはどのくらいの量のことでしょうか?

    ビール中ビン0.5本、日本酒0.5合が純アルコール10gに相当します。これを1ドリンクとして換算すると、女性であれば1ドリンク、男性であれば2ドリンク程度が心筋梗塞リスク予防のための「適量」といわれています。

    しかし、この「適量」を過ぎると、心不全発症率が上昇したり、心房細動という不整脈が出やすくなったりします。また、過度な飲酒は血圧を上昇させるため、飲めば飲むほど高血圧による脳出血リスクが高まるので注意が必要です。さらに、過度な飲酒は中性脂肪を増加させるため、心筋梗塞のリスクにもなりますし、冠れん縮性狭心症(異型狭心症)発作が起こりやすくなるという報告もあります。

    いずれにしても、循環器病に良い「適量」があるとはいえ、飲酒そのものを勧めるものではありません。なぜなら、飲酒は循環器病のほかにもさまざまな問題点を抱えているからです(依存症、転倒、ドメスティック・バイオレンス(DV)、感染症、がんなど)。

    睡眠不足や質の低下が循環器病の原因になります

    毎日、朝起きたときに良い睡眠を実感できていますか?

    私たちは人生の3分の1を睡眠に費やします。つまり、睡眠は人生の一大イベントであり、良質の睡眠は良質の人生を送るカギになります。しかしながら、現代の生活はインターネット普及による仕事の家庭への持ち込みや、スマートフォンに費やす時間が増えており、睡眠不足や睡眠障害の原因になっています。

    不眠は万病のもと

    令和元年 国民健康・栄養調査結果によれば、1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも睡眠時間が最も短い国の一つです。睡眠には、覚醒中に傷ついた体を回復する働きがあるため、睡眠不足や睡眠障害の多い日本人はその回復を妨げられた状態といえます。

    たとえば、睡眠は食欲を高めるホルモン(グレリン)と抑えるホルモン(レプチン)のバランスを保つのに役立ちますが、睡眠がとれていないとグレリンが一方的に上がるため、食欲が治まらず肥満につながります。また、夜更かしは夜食を誘いますので、余計に食べ、余計に太ります。さらに、覚醒時間帯は交感神経が活性化していますので、血圧も血糖値も上がり、生活習慣病は悪化します。その上。夜間に回復するはずの免疫機能が回復しないため、感染症に陥りやすいという特徴もあります。

    睡眠中に呼吸が止まる!

    睡眠不足だけが睡眠の問題ではありません。最近では睡眠そのものに関する病気が増えています。

    たとえば、『睡眠時無呼吸症候群』という病名を聞いたことはありますか?

    これはその名の通り、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。肥満の人に多く、大きないびきの後に数十秒間も呼吸が止まります。もちろん、呼吸が止まると酸欠になるので苦しくなり、心拍数も血圧も上がります。しかし目が覚めるほどではなく、また呼吸を再開していびきをかき始めます。これを一晩中繰り返します。

    いわば「口を何度も塞がれながら苦しみに耐えて睡眠を継続」している状況であり、熟睡はできません。結果、10時間の睡眠時間でも熟睡時間が2時間以下という「寝不足」の状態となり、翌朝もけだるさや眠気が残るわけです。それだけではなく、血圧が下がる暇がなくなるので高血圧が悪化し、心筋梗塞や不整脈などの循環器病になってしまいます。

    このようなことからも「いびき+昼間の眠気」は睡眠時無呼吸症候群の危険信号として、一度は検査を受けることをおすすめします。

    快眠のためのテクニックは、厚生労働省の「e-ヘルスネット」などにもありますので、ぜひ参考にしてください。
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html

    ストレスは循環器病の敵です

    ストレスとうまく付き合えていますか?

    ストレスや”うつ”症状が心筋梗塞などの循環器病に影響を与えていることがわかっています。たとえば、ストレスを増やす行動パターンの人は心筋梗塞になりやすいといわれています。このような行動パターンは、『タイプA行動パターン』と呼ばれており、競争的、攻撃的、野心的で、精神的・身体的にてきぱきとした行動を示します。向上心をもち、責任感が強く、完璧をめざして積極的に行動することが多いので、仕事の面などでは「できる人」として高く評価されます。ただし一方で、このような人はせっかちで怒りっぽく、苛立っていることが多いため、慢性的にストレスの状態にさらされているともいえます。タイプAの人は「社長」や「リーダー」と呼ばれる人に多いのですが、ストレスが原因で血圧が上がり脈拍が増えるため心臓の負担が大きくなり、心筋梗塞などの循環器病が発症しやすくなります。たまに「社長が急死」というニュースを聞くことがありませんか?・・・それです。のんびり型の『タイプB行動パターン』の人より心筋梗塞が2倍に増えますので注意が必要です。

    自分がタイプA行動パターンかな?と思われる方、少し考え方や行動を変えてみると、ストレスを軽減でき、循環器病のリスクから遠ざかることができるかもしれません。自分はタイプAだが何をしたらよいかわからない場合は、とりあえず無理のない運動から始めてみてはいかがでしょう。運動はストレスを軽減し、認知機能の低下も防ぐとされています。

    循環器病とうつ病にも密接な関係があります

    うつ病になると心不全などの循環器病が悪化しますが、逆に心不全が悪化するとうつ病を引き起こすことがあります。。このため、うつ病は早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。

    うつ病の特徴的な症状に、気分がふさぎがちになり、これまで楽しめていたことが楽しめず、興味が薄れ、意欲が低下していくことがあります。一方で、気持ちの面ではそれほど症状はないけれども、はっきりとしない体の不調を感じる方もいます。このため、なんとなく不調なのはうつ病かも?と思ったら、医療機関を受診し、医師に相談してみましょう。

    そのほか、循環器病の引き金になる「病気以外の要素」として次のようなものがありますので、参考までにご覧になってください。

    • ヘルスリテラシーの欠如
    • 不運な出来事(DV,、外傷、身の安全上の不安)
    • 低所得・財政破綻
    • 家庭環境の不衛生
    • 社会的サポートの不足

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