知る

循環器病を正しく知ってほしい。
あなたを守るためのさまざまな情報を届けます。

知る

心不全

目次

    「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」。これは2016年に日本循環器学会と日本心不全学会が発表した心不全の定義です。一方で、心不全は“病気”の名前ではなくあらゆる心疾患の終末像の“状態”であるともいわれます。

    さて、どちらが正しいのでしょうか?

    その答えは「両方正しい」。医学的には病気というよりは病状とされています。が、これではわかりにくいため、ここでは病気の1つとして上記の「定義」を紐とく形で説明していきます。

    「心不全」とはなに?

    心臓は全身に血液を送り出すポンプです。このポンプの力が弱くなり必要な量の血液を送り出せなくなった状態を「心不全」といいます。結果として血液の流れが不足し、ある臓器では血液の渋滞(うっ血)が生じ、またある臓器では酸欠(虚血)が生じることにより、さまざまな症状が出現することになります。

    「心臓が悪いために」〜心不全の原因はなんだろう?〜

    心不全の原因は様々です。あらゆる心臓の病気が最終的に心不全の原因となりうるといわれています。なかでも「高血圧」や、心臓の血管が詰まってしまう「心筋梗塞」、心臓の筋肉が異常になる「心筋症」、心臓の部屋を区切る弁に異常が出る「弁膜症」、脈が乱れる「不整脈」などは心不全を起こしやすい病気です。心不全はこのような病気の結果、最後にたどり着く、疲れ切ってヘトヘトの状態であるといえます。

    「息切れやむくみが起こり」〜心不全の症状はどのようなもの?〜

    心臓のポンプ機能が落ちて、様々な症状が出るのが心不全です。本来は勢いよく心臓から飛び出していく血液が勢いを失うことにより、以下のような症状が出ます。

    呼吸困難、息切れ、息苦しい、呼吸が浅く・速いなど

    心臓から送り出されるはずの血液が停滞し、肺の中で渋滞(うっ血)してしまいます。その結果、水分が肺にしみ出し、うまく酸素の入れ替えができなくなります。そうすると、「息苦しさ」を感じるようになります。とくに階段を上ったり、夜間睡眠中などに起きやすいのが特徴です。

    むくみ(浮腫)、体重の増加

    本来心臓に戻るはずの血液が足で停滞するため、水分がしみ出し「むくみ」が起きます。腎臓の血流も少なくなるため尿が作られにくくなり、その結果、尿の量が少なくなります。その分の水分は体の中にたまり体重が増えます。心不全において「体重が増える」ことは食べ過ぎを意味するのではなく、「水分がたまった(心不全が悪化した)」という意味ですので覚えておいてください。

    だるい、疲れやすい

    心不全では全身の臓器の血流が減ります。とくに運動をつかさどる筋肉の血流低下は酸欠を引き起こすため、疲れやすく回復しにくい体になります。

    食欲がない

    胃腸も酸欠+うっ血になるためうまく動かなくなります。その結果、食欲不振やお腹が張る感じなどの症状が現れることもあります。

    「だんだん悪くなり」〜心不全のステージ分類ってなに?〜

    心不全は完全に治るものではないため、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、ステージがA→B→C→Dと一方通行で進行していきます。決して後戻りしないので、上手に付き合い、それ以上進まないようにすることが重要です。後戻りはできなくともその場で止めることはできるのです。

    「生命を縮める病気です」〜心不全はがんと同じくらい危ない〜

    心不全で入院したことのある人は平均で5年間に約半数の方が亡くなります。これは大腸がんと同じくらい怖い病気であることを意味します。しかし、後で述べるように心不全は進行を予防できるという特徴があるため、余命は個人差が大きく「余命は何年です」とは説明ができないのです。つまり余命を決めるのはあなた自身であるともいえます。

    心不全とうまく付き合っていくために

    前項において、心不全と大腸がんは同じくらい怖い病気と説明しました。しかし、心不全と大腸がんには大きな違いがあります。それは「”うまく”病気と付き合えるととても長生きできる」こと。

    では、心不全との良い付き合い方とはどのようなものでしょう?

    次のリストで勉強してみましょう。

    ① 毎日、体重を測定し、記録しましょう(朝、排尿後、朝食前)

    急速な体重増加は「水がたまった = 心不全が悪化した」兆しです。

    ② 塩分・水分の摂り過ぎに注意しましょう

    体内の水分が増えると、全身の血液の量が異常に増えて心臓への負担になります。また、塩分は体内の水分量を増やすので、負担がより大きくなります。普段の食事を薄味にすること、減塩食などを上手に活用しましょう。

    ③ 無理のない範囲で身体を動かしましょう

    動かないでいると心臓や肺の働きは衰えてしまいます。かといって無理は禁物です。無理をすると心不全は悪化するからです。無理のない程度の運動を主治医に「処方」してもらい、心臓の衰えを予防しましょう。

    ④ 過労・ストレスをため込まないように、しっかり休息をとりましょう

    過労やストレス、また睡眠不足は心臓が休まる時間を奪うので大きな負担になります。これらは不整脈の原因にもなることがあります。

    ⑤ 禁煙・節酒を心がけましょう

    たばこは全身の動脈硬化を進めます。そして、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また喫煙により脈が速まり血圧も上がり、不整脈が起こりやすくなります。ですので、たばこは今すぐやめましょう。アルコールは飲み過ぎると水分の取り過ぎにつながり、血圧も上がるため心臓への負担になります。また酒のつまみは塩辛いものが多いので、塩分と水分を取り過ぎる結果となるので注意しましょう。

    心不全で入院したら

    安静、酸素投与、薬物療法が基本になりますが、心不全を発症した原因や、心臓のポンプ力に応じて必要な治療が変わってきます。たとえば、心筋梗塞などで心不全を発症した場合は冠動脈に対する治療が、不整脈が原因の場合は不整脈に対する治療が追加で必要になります。また心臓のポンプ力が著しく低下している場合は、心臓をサポートする機械や手術が必要になることもあります。

    このページの先頭へもどる