~実態調査をベースに考える「かかりつけ医」の役割~

高齢化の進展に伴い、心不全患者数は増加の一途をたどっており、いわゆる「心不全パンデミック」への対応は、わが国の医療における重要な課題となっています。心不全の発症や増悪を防ぐためには、症状が現れる前のステージA・Bの段階から適切な介入を行い、必要に応じて専門医療へつなげていくことが求められます。その中核を担うのが、地域で継続的に患者を支えるかかりつけ医です。
一般社団法人日本循環器協会 医療連携委員会では、これまでも地域心不全診療における病診連携・多職種連携の推進や、成人先天性心疾患の実態調査など、地域における循環器診療の質向上に向けた取り組みを継続的に進めてきました。今回実施したかかりつけ医を対象とする心不全診療の実態調査と、その結果をもとにしたワークショップはこうした医療連携委員会の活動の一環として企画・推進されたものです。今回のみの単発の調査企画ではなく、地域における心不全診療の実情を丁寧に把握し、今後のより良い連携のあり方を検討していくための継続的な取り組みとして位置づけられます。
調査では、心不全症状のないステージA・B患者に対しても、約85%の医師がBNP/NT-proBNP測定を実施していることが示されました。(図1)一方で、測定頻度や専門医紹介の判断基準には一定の幅がみられました。また、「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」の認知度は約50%にとどまり(図2)、早期発見・早期介入に関する考え方や基準のさらなる共有・普及の必要性も示唆されました。


本調査とワークショップを通じて明らかになったのは、課題だけではありません。かかりつけ医の先生方が、循環器専門医・非専門医に関わらずBNP/NT-proBNPを活用したスクリーニングに加え、心エコー検査や薬物治療、患者背景を踏まえた継続的な診療など、日常診療の中で幅広く心不全診療に取り組まれている実態も共有されました。現場で積み重ねられてきた工夫や知見は、地域医療連携を支える重要な基盤であり、今後広く社会に共有されるべき貴重な実践知といえます。
ワークショップでは、今回の調査結果を土台にしながら、測定後の診療方針や専門医紹介の目安、病院・診療所間の情報共有、多職種連携を通じた患者支援のあり方などについて、活発な意見交換が行われました。さらに、令和8年度診療報酬改訂において新設された「心不全再入院予防継続管理料」への期待も含め、ステージA・Bでの早期発見・予防から、ステージC以降の専門的管理、そして再入院予防までを切れ目なく支える地域連携体制の重要性が改めて確認されました。
今回の取り組みは、地域連携の現状に課題を見いだすだけでなく、すでに各地域で実践されている優れた取り組みを可視化し、その価値を広く共有する機会にもなりました。アンケートやワークショップにご参加いただいた先生方のご協力によって、地域に根差した心不全診療の実像と可能性が明らかになったことは、大きな意義があります。日本循環器協会 医療連携委員会では、こうした現場の知見を今後の活動にも生かしながら、かかりつけ医と循環器専門医、さらには多職種が連携して患者を支える体制づくりを引き続き推進してまいります。







