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まず、そのアドヒアランスの問題の要因・理由を明確にすることです。これを明確にすることによりアプローチ方法も変わってきます。
例えば独居で内服薬が服用できないことが要因で、心不全が増悪したとします。その場合には、なぜ内服薬が服用できないのかを服薬行動を観察して考えます。服用し忘れることが問題なら、お薬カレンダーを使って確実に服用できるようにします。また、目が見え難いといった方には表示を大きくすることや薬袋を分けるといった工夫が必要です。さらに、認知機能が低下して服薬あるいは受診行動が難しい場合には、介護保険サービスを導入して服薬の確認をしてもらったり、訪問看護・訪問診療などで処方が途絶えない対策を考えます。循環器治療薬は高額であることが多いため、費用負担の問題がある場合には処方内容をカンファレンス等で検討して、利用できる社会保障制度などについても検討する必要があります。本人が薬を飲む必要性を感じていない場合は、その理由を尋ねることにより病態の理解を助けることができます。とくに心不全の治療薬は種類が多いうえに、「増悪を遅らせる」といった「効果が見えにくい」薬剤が多いため、本人の病態への理解が不可欠です。
食事で塩分過多になり再入院を繰り返しているといったような場合は入院中や退院時の説明はもちろん重要です。例えば、インスタント食品などの塩分過多な食事を摂っている場合には、その患者さんがなぜその食品を選択しているのかを知る必要があります。袋麺のインスタントラーメンや惣菜は調理の手間がなく簡単です。そういった調理の問題では、具材の選び方や野菜の追加摂取、食品成分表示を確認すること、あるいは宅配食を利用するなど、患者さんと相談しながら実行可能な方法を検討する必要があります。
退院後は入院中と違って管理されない環境であり、外来受診時などの面談や退院後の電話訪問といったような方法で患者さんの生活を知り、出来ていることは賞賛し改善すべきところは具体的なアドバイスをすることで増悪予防につながります。
#心不全 #服薬指導 #アドヒアランス
2023年1月6日
近森病院看護師 井上有紗
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