心臓の病気の知恵袋

会員様のお悩みやご相談に医療者がお答えします。

Q
健診で「心室性期外収縮」を毎年指摘されます。
これはどのような病気でしょうか?
また、放置しても大丈夫な病気でしょうか?

A

心室性期外収縮は健常人でも現れるもっとも一般的な不整脈です。
「心室性」とは「心室が不整脈の発生源である」という意味です。そして「期外収縮」と言うのは「時”期”を”外”れて心臓が”収縮”する」という意味です。時期が外れるので脈のタイミングがずれます。手首で脈をとってみると「トントントントン」という心臓の正しいリズムが「トントントントトトン」と一瞬タイミングがずれることで気づきます。人によっては「動悸」として感じることもありますが、健診で指摘される心室性期外収縮のほとんどは無症状です。

さて、心室性期外収縮は治療が必要な病気でしょうか?

答えは「もともと心臓病を持っているかどうか」によって変わってきます。
①もともと心臓病がない →治療が必要でないことがほとんど
②もともと心臓病がある →治療が必要なことが多い

「もともとの心臓病」とは、心筋梗塞(しんきんこうそく)や弁膜症(べんまくしょう)、心筋症(しんきんしょう)などの病気のことです。これらの心臓病は心不全や心停止に至る可能性のある重大な病気です。病気が進行した結果、「心臓の悲鳴」として心室性期外収縮が出ていると考えると良いでしょう。この悲鳴に答えるためにも治療が必要になります。ただしこの場合の治療とは不整脈の薬を投与すると言うよりも、もともとの心臓病の治療を強化することで行われます。その結果、もともとの心臓病が改善することで「悲鳴」が減り心室性期外収縮も改善されるのです。

心臓病を持っていない方の心室性期外収縮は一般的に良性です。私もあなたも1日に数回から数百回くらいは心室性期外収縮が出ているのが普通です。動悸がするなどの悪さをしていない限りは放置してしまいましょう。ただし、数が多かったり波形が通常の心室性期外収縮と異なる場合は専門医を受診するように指示があるはずです。そのときは忘れずに循環器内科専門医の外来を受診しましょう。

え?
「もともとの心臓病」を持っているかどうか分からないからどうすればよいかわからない?

そんなときは心電図で「心室性期外収縮」以外の所見があるか、そして胸のレントゲン検査や採血検査、そして血圧測定などで異常がないかが鍵を握ります。いずれの検査でも異常がみられず「心室性期外収縮」だけを指摘されている場合、あなたは「もともとの心臓病」がないと判断できるでしょう。

一方で、胸のレントゲンで心拡大といわれたり、採血検査で糖尿病や脂質異常症といわれたり、また、高血圧を放置していたりしているようでしたら、あなたは「もともとの心臓病」をお持ちかもしれません。その際は循環器内科専門医で精密検査をしてもらいましょう。もちろん息切れや動悸、胸痛などの症状があるときは心臓の病気が潜んでいる可能性が高いのでちゃんと検査を受けて下さいね。

精密検査で必要になるのは、心エコー(超音波検査)とホルター心電図(24時間心電図)です。街のクリニックでもできることが多いので、ぜひ問い合わせてみて下さい。

2022年11月23日
東京大学循環器内科 循環器内科専門医 原田睦生

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