心臓の病気の知恵袋

会員様のお悩みやご相談に医療者がお答えします。

Q
健診で「心房細動」と指摘されました。
これはどのような病気でしょうか?
また、放置しても大丈夫な病気でしょうか?

A

結論からいうと、放置すると脳梗塞になる人が多いので循環器内科を受診してください。
詳しくは日本循環器協会のホームページからダウンロードできるこちらのリーフレットをご覧ください

――

心房細動とは

心房細動は約100万人の国民が患う不整脈といわれ、高齢者人口の増加に伴い、患者数も増えています(加齢により増加する不整脈といわれます)。文字通り、「心房が細かく動く(ピクピク震える)」様子から、心房細動と名付けられました。

心房細動と言われたらまず循環器内科を受診しましょう

心房細動は放置してもよい人と、放置してはいけない人がいます。また、放置してはいけない場合、飲み薬による治療が必要になりますが、症状が強い場合や心不全などのリスクが高いときはカテーテルアブレーションという手術を行うこともあります。また、甲状腺ホルモンの異常や弁膜症など、心房細動の原因が分かっている場合は、その原因の治療を優先することで心房細動が改善することがあります。


そして、重要なことは、これらの見極めは自身では不可能であること、そして循環器内科を受診する必要があるということです。特に、心電図検査はもちろん、血液検査と心エコー検査により、甲状腺ホルモンの異常や弁膜症がないことを確認することが重要です。

心房細動を放置するとどうなる?

ここでは、動悸などの症状がなく、甲状腺と心臓の弁に異常がない前提で話を進めます(異常があればそちらの治療を最優先します)。


一般的に健診で心房細動を指摘される人は、動悸などの症状がありません(症状があれば健診を待たずに病院に行きますね)。このため、受診せずに放置してしまう人が後を絶たないのですが、残念ながらその結果として脳梗塞を発症して寝たきりになる人も多く見られます。


つまり、心房細動を放置すると以下のようなリスクを放置することになります。

  • 脳梗塞
  • 心不全
  • その他(認知症など)

とくに、心房細動に伴う脳梗塞は、寝たきりに繋がる大きな麻痺を伴うことが多いため、脳梗塞を予防することが最重要事項となります。

心房細動で脳梗塞になりやすい人とは?

それでは、どのような人が脳梗塞になりやすいのでしょうか?
統計的に、以下の病気のうち一つ以上に当てはまる人は、脳梗塞になりやすいといわれています。

  • 過去の脳梗塞/TIA(一時的な麻痺症状)
  • 心不全
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 75歳以上

これらのリスクファクターに当てはまる場合は、「血液が固まりやすい=脳梗塞になりやすい」という体質のため、生涯にわたり抗凝固薬という「血液をサラサラにする薬」を服用する必要があります。逆にいうと、上記に当てはまらない場合は、経過観察も可能(な場合もある)ということです。

また、脳梗塞を予防するには抗凝固薬のみならず、上記のリスクファクターの管理も必要です。つまり、(年齢は変えられないので)心不全、高血圧、糖尿病の薬物治療を並行して行うことになります。

心房細動になると、どうして脳梗塞になりやすいの?

それは、心房内の血液が滞る(よどむ)からです。道路の側溝もそうですが、流れが滞ると泥などが堆積してきます。血液も同様で、流れが悪い場所の血液は固まります。心房細動では、心房内の血液の流れが非常に悪くなるので血液が固まってしまい、これが「血栓」として下流に流されたときに脳梗塞が発症するといわれています。

心房細動は治るの?

一般的に、心房細動は加齢とともに増える老化現象ともいえますので、若返りの薬でも発明されない限りは「完治する」ことはありません。心房細動が止まったとしても「必ず再発する」という前提で一生付き合う必要があります。

しかし、希望はあります。それは、「心房細動の発生源」を高周波で焼く「カテーテルアブレーション治療」が目覚ましい勢いで進歩しているからです。どのような治療でもリスクとベネフィットを天秤にかける必要があるのですが、カテーテルアブレーションは最近10年間で劇的にリスクが減り、ベネフィットが向上しています。

最後に

健診で心房細動と言われたらやるべきことは次の3つです。

  • 循環器内科を受診する
  • 脳梗塞の予防をする
  • 治療方針を一緒に考える

カテーテルアブレーション治療の発展とともに、心房細動の治療もダイナミックに変化しています。まずは最寄りの循環器内科医に相談して、治療方針を決めましょう。

2025年6月3日

東京大学循環器内科/はらだメディカルクリニック
原田睦生

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